戸田市議会平成16年第2回定例会にて神保国男市長が発表された戸田市政施政方針

平成16年戸田市政施政方針

平成16年2月23日に議会にて発表された神保国男・戸田市長の施政方針です。
戸田市ホームページ PDF文書より転載)


【 目 次 】

はじめに
市政運営の基本方針
予算編成方針
予算規模
平成16年度の主な施策
 ・(保健・医療・福祉)
 ・(学校教育・生涯学習と文化)
 ・(環境と市民生活)
 ・(産業と労働)
 ・(都市基盤と生活基盤)
 ・(参加と交流)
 ・(市政運営)
むすび


はじめに

 本日、ここに平成16年度の当初予算案をはじめとする重要な諸案件をご審議いただくため、平成16年第2回戸田市議会定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様には、ご健勝にてご参集を賜り、厚くお礼を申し上げます。

 この機会に、私が今後の施政に臨む所信の一端、予算編成方針、さらには主要施策等について申し述べ、市民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力をお願いする次第です。

 さて、昨年はイラク情勢の混迷、北朝鮮拉致問題解決の難航などを通じ、国際社会の協調と平和や人権の大切さを再認識した1年でありました。まさに国際平和なしには個人の安全も成立し得ないことを、改めて実感いたしました。

 加えて、狂牛病、すなわち牛海綿状脳症問題の再燃や鳥インフルエンザの発生などにより、食の安全に不安の広がる事態が起きております。安心・安全な生活を維持する上で、政府や地方自治体の役割の重要性と迅速な対応が、今ほど求められている時代はないと考えます。

 他方、国内に目を向ければ、この1月に政府が発表した月例経済報告では、景気判断に3年ぶりに「回復」の2文字が盛り込まれ、長らく低迷を続けてきた国内経済にようやく光が差し始めてまいりました。平成16年度は本格的な景気回復へ向けた正念場になると考えられますが、これまでのような国主導による公共事業を中心とした景気浮揚策によって、この局面を乗り切ることは困難です。地方の自立・発展なくして持続的な景気回復は成し得ず、今こそ地方自身が、産業、技術、観光資源など、地域の有する個性や強みを活かし、自らの発案と実行によって地域経済の再生を図り、国を支えていくとの気概を持って自治を運営していくことが重要であります。

 また、地方分権については、三位一体の改革や構造改革特区制度の創設によって、いよいよ、その改革は実行段階に入ってきた感を強くしています。本市では構造改革特区制度において、積極的に複数の提案を行った結果、「国際理解教育推進特区」の認定やコンビニエンス・ストアにおける納税が全国規模の規制緩和につながるという具体的な成果に結びつきました。

 この構造改革特区制度は、各地方自治体の創意と工夫による自主的な提案によって規制の壁を突破するものであり、自治体における改革意識や自治能力の差が比較評価される「自治体間競争時代」の本格化を象徴しています。

 従って、各地方自治体はこれまでの画一的な自治から脱却し、自己決定と自己責任の下で未来につながる独自の道を拓いていかねばなりません。厳しい時代でありますが、やり甲斐のある時代でもあります。私は、市長就任以来、築き上げてきた市民とのパートナーシップ、そして改革への取り組みが、このような困難な時代の中で成果をもたらすものと確信しています。

 ところで昨年は、スポーツ界を中心に、国際的な舞台で活躍する数々の若者の雄姿が大きな話題となりました。特に日本球界の4番打者の地位を投げうって、メジャーリーグに果敢に挑戦したニューヨーク・ヤンキース松井選手の活躍に、野球ファンならずとも注目したのは記憶に新しいところです。

 ホームランを放ち、帽子をとって観衆の祝福に応えるその姿を見て、私は、夢を描くことのすばらしさ、夢に挑戦することのすばらしさ、そして、夢を実現した喜びを人々とわかちあうことのすばらしさを感じました。それと同時に、彼が華々しい舞台に立つまでに蓄積してきた、人知れぬ研鑽の日々に思いをめぐらしました。

 私の夢は、私の愛する郷土戸田に住まう人々の幸せです。実現への過程は決して平坦な道ではありません。しかし、困難な道であるからこそ、この夢の実現を市民の皆様とわかちあう喜びも、より大きなものとなります。

 そこで私は、これらのことを念頭に、次の3点を平成16年度の市政運営の基本方針とし、全力で市政に取り組んでまいります。

市政運営の基本方針

 第1点目は、
水や緑を再生し、自然環境と共生することによる「持続可能都市の創造」への取り組みであります。

 私は昨年、基本方針の1点目に「自立した都市を築く」を掲げましたが、戸田市が都市として自立し、さらにその存在感を発揮し続けていくためには、三つの要素が三位一体となって推進されるべきであると考えます。それは、
地方分権という制度改正パートナーシップによる市民社会の成熟、そして、三つめは今回の基本方針となりますが、成長都市としての都市基盤整備を進めるとともに、その過程において生命の循環が生き生きと営まれる生活環境を再生することです。

 昨年、数々のベストセラーを世に送り出した解剖学者の養老孟司氏は、いくつかの著作において自然と人間の関係を論じる中で、「手入れ」という概念を取り入れ、「人間と関係をもってしまった自然にはきちんと手を入れ、自然のシステムを守ってやらなければならない。」と述べています。

 現在戸田市では、これまで本市の都市基盤整備の中心事業として推進してまいりました新曽第一土地区画整理事業に加え、昨年11月には新曽第二土地区画整理事業が事業認可を受けました。また、平成16年度は北戸田駅東1街区市街地再開発につきましても本格的に事業着手し、まさに今、本市は都市としての新たな成長段階へのステップを歩み始めたと言えます。

 そして、戸田市のように成長過程にあり、都心に近いまちが、自然環境と調和して発展していくためには、この「手入れ」の思想が不可欠であり、都市基盤整備を進める際に、緑や清流、そこで育まれる動植物などの生命の循環を再生していく試みが必要であると考えます。

 潤いのある清流の復活や緑のネットワークの形成などの一連の取り組みが軌道に乗りつつあり、ガーデンシティ構想は、つぼみから花開く時期を迎えています。このガーデンシティ構想とは、市民にとって魅力的な景観を提供するだけでなく、戸田市という大地がひとつの生命体として、未来へ向けて持続可能な都市環境を育んでいくためのまちづくりであると言えます。

 私は、埼京線の車窓から、戸田市の街並みを眺めるたび、新たな成長段階への胎動を始めたこのまちの将来性を実感しています。そして、四季折々の豊かな自然環境に彩られ、人が集い、人が出会い、人が輝く、未来の姿を想像しています。その将来像を実現すべく、人・水・緑が調和し、共存するまちづくりを目指してまいります。

 第2点目は、
子どもたちの未来の夢を育み、まちの未来を拓くための“教育のまち 戸田”の実現へ向けた取り組みであります。

 戸田市では昨年、構造改革特区制度により「国際理解教育推進特区」の認定を受け、市内各小学校においてコミュニケーションを中心とした英語活動を継続的に実施しています。英語の音声面における感覚を磨くことは、国際化時代へ対応するための第一歩となりますが、同時に重要なのは、児童が積極的に授業に参加することにより、学ぶことの楽しさや充実感などから学習意欲や自主性を育むことです。

 また、英語活動を通じて喚起される異文化に対する興味・関心は、草の根の国際交流や生涯学習の充実にもつながり、これは自国の文化への理解の一助にもなると考えます。この英語活動による国際理解教育の推進や「わかる・のばす100時間スペシャル授業」などの充実は、基礎学力を蓄積し、さらに、平成16年度に新たに実施予定の「数学コンテスト」は、より豊かな発想を育てていきます。そして、これらの試みにより、子どもたちに「やればできる」という自信の種をまき、将来の夢を実現するための礎を築いていきます。

 
学習内容の充実に加え、学舎(まなびや)の環境整備も不可欠です。地域イントラネットを利用したテレビ会議などの学校間交流の実施により、情報化時代に対応するための学習環境の充実を図ります。また、2学期制の試行や平成17年度から実施予定の中学校の選択制の研究などを行うとともに、“教育のまち 戸田”の実現へ向けた中長期的な枠組みとなる「戸田市教育振興計画」の策定に取り組んでまいります。

 「教育とは、学校で習ったことをすべて忘れた後にのこっているものである」。これは20世紀を代表する科学者アインシュタインの言葉です。一見逆説的な言い方ではありますが、教育の本質的な一面を端的に表現しているという印象を受けます。

 我々は、学校で習った多くの細かな知識をすべて記憶に残しているわけではありませんが、その過程で培った自主性や探求心、創造性や達成感はその後の人生をたくましく生きていくための大きな糧となります。また、学校生活の様々な交流や福祉・ボランティア体験などを通して、子どもたちは思いやりの心を育み、それはやがて地域社会や国際社会における協働の源になります。

 子どもたちが未来の夢を開花させるために必要なことは、このようなたくましさや思いやりを学校や地域の中で育むことであり、それは、個人が自らの責務を果たし、協働して築く未来の地域社会へとつながります。まさに人づくりはまちづくりそのものであるとの観点から、教育内容・教育環境の一層の充実に努めてまいります。

 第3点目は、
「市民が安心して暮らせる安全なまちづくり」への取り組みであります。本市は、昨年8月に県から「防犯のまちづくり重点市町村」に指定されており、防犯パトロール等の実施により一定の成果はみられたものの、ひったくり等の街頭犯罪や侵入・窃盗の発生率は依然として高い状況にあります。私はこの現状を打開するためには、犯罪防止に対する欧米諸国の取り組みが参考になると考えます。日本はかつて、欧米諸国で犯罪発生率が増大する中で安全神話を誇り、その治安状況は世界的に高い評価を得ていました。しかし、この10年ほどでこの状況は大きく様変わりしており、日本の犯罪発生率が大幅に上昇する一方で、徹底的な犯罪防止に取り組んできた欧米諸国では犯罪発生率が減少傾向にあります。

 犯罪の抑制に成果を上げ始めた欧米諸国の取り組みには二つのポイントがあったと考えられます。一つめは「予防に勝る治療なし」の理念の下、犯罪対策を検挙中心から予防重視へと転換し、「犯罪機会」の減少に努めたことです。二つめは、イギリスの「犯罪及び秩序違反法」にみられるように、コミュニティの安全を確保するために、防犯対策における地方自治体の役割の重要性を明確化したことです。

 このように、犯罪の発生抑止は警察のみによる努力では限界にあり、警察、地方自治体、地域住民が一丸となって連帯意識を高め、犯罪の芽を未然につみ取ることが必要であると考えます。昨年12月には議員の皆様からの提案により
「戸田市みんなでつくる犯罪のないまち条例」が制定されたところです。こうした流れを受け、平成16年度には防犯にかかる事業を重点的に実施するため、新たに「防犯対策室」を設置いたします。そして、この条例に規定された基本方針の策定や犯罪防止に向けた啓発活動等、犯罪のないまちづくりに向けた取り組みに努めてまいります。

 また、防犯対策のみならず、
違法駐車の排除、交通安全施設の整備などの交通安全対策や小中学校の耐震補強などの防災関連事業を実施し、生活環境の安全性の向上にも配慮してまいります。

 市政におけるいかなる理念や事業も、市民が安全な環境の中で、安心して暮らせる地域社会の存在なしに語ることはできません。そして、「安全」は市民の生命と財産を守るための、最も根本的で重要な福祉であります。以上の観点から平成16年度は、
「市民が安心して暮らせる安全なまちづくり」を重点的に推進してまいります。

予算編成方針

 次に、平成16年度予算編成方針について申し上げます。

 依然厳しい財政状況が続いている中で、本市の行政需要は益々複雑化・多様化しながら拡大することが予想され、これに対応した適切かつ効率的な行財政運営が求められます。従いまして、引き続き経常的な経費の節減を図るとともに、優先度・緊急度に配慮しながら事業を厳選し、幅広い行政分野に積極的に対応したところであります。

 まず、歳入については、本市の自主財源の根幹となる市税収入のうち、個人市民税は、人口の増加が見込まれるものの雇用・所得環境は依然厳しい状況が継続しているため、若干の減収と思われます。一方、法人市民税は、景気は持ち直し傾向にあり企業収益の回復が見込まれることから、前年度より上向くものと予測しております。また、固定資産税は、依然として土地の下落傾向は続いておりますが、負担調整措置による増と家屋の新増築や大規模共同住宅などの増により、上積みが見込まれます。これらを含め、市税全体では前年度に比べ若干の増額と予測いたします。

 次に、歳出については、福祉施設の整備や学校施設の充実、土地区画整理事業等の都市基盤整備をはじめとした重点施策を着実に推進するために、これら事業に積極的かつ効率的な予算配分に努めたところであります。

 一方、市の借入金であります市債残高は、水道企業を除く借入額が平成15年度末見込額で360億円に達しようとしており、さらに土地開発公社への債務保証額についても212億円を超えていることから、今後の財政負担は引き続き厳しさを増す状況にあります。

 これらとともに、国庫補助負担金及び地方交付税の改革並びに税源移譲等、国の三位一体の改革の実施により地方負担がさらに求められてくるといった非常に厳しい財政状況の中で、自主財源である税収の積極的な確保に努めるとともに、経常経費の抑制を図り、市民要望の高い事業には基金の活用などによる積極的な対応を図り、限られた財源を有効に配分したところであります。

予算規模

 それでは、予算の規模について申し上げます。

 一般会計の歳入歳出予算案の総額は、401億4千万円となり、対前年度比率で9.2%の増となっておりますが、これは、平成7年度及び8年度に借り入れを行った減税補てん債の一括償還と借換分13億2,890万円が含まれますので、これを差し引きますと5.6%の増となっております。また、特別会計の予算案については、国民健康保険特別会計ほか11会計で、合計222億637万7千円となり、対前年度比率で1.1%の増となっております。その結果、一般会計及び特別会計を合わせた予算案の総額は、623億4,637万7千円となり、対前年度比率で6.1%の増となりました。

また、水道企業会計の予算案については、収益的収入24億2,283万9千円、同支出23億4,085万2千円、資本的収入4億8,033万9千円、同支出12億8,973万4千円となっております。

 次に、一般会計予算案の概要について、歳入から申し上げます。

 はじめに、市税収入については、230億8,581万円で前年度に比べ、7億4,524万8千円の増となっております。

 市税の主なものとしては、個人市民税で納税義務者の増が見込まれるものの、現在の経済状況及び今後の動向を見極め、現年・滞納繰越合わせ、対前年度比率1.1%の減を見込んでおりますが、法人市民税では、景気の回復傾向が見られることから対前年度比率8.0%の増を見込んでおります。固定資産税については、土地、家屋及び償却資産全体で4.5%の増を見込んでおります。

 諸収入については、全体では20億3,783万2千円、対前年度比率1.4%の増となっておりますが、その中で競艇事業収入については前年度と同額の10億円となっております。

 財源比率については、自主財源が294億6千万円と対前年度比率3.7%の増となりましたが、歳入総額に占める自主財源比率は、減税補てん債の借換の影響により、前年度に比べ3.9%減の73.4%となっております。

 次に、主な歳出について目的別に申し上げますと、民生費は115億6,500万9千円、教育費は78億209万6千円、土木費は72億7,558万6千円などとなっております。

平成16年度の主な施策

 続きまして、平成16年度の主な施策について申し上げます。

(保健・医療・福祉)

 はじめに、保健・医療・福祉について申し上げます。

 次世代を担う
子育て支援については、子どもが健やかな環境で育成されるために、「(仮称)戸田市次世代育成支援行動計画」の策定に取り組むとともに、育成相談や複雑化する児童問題の相談体制などを充実してまいります。また、喜沢南及び笹目川保育園での0歳児の延長保育や、一時保育サービスの拡充を実施し、さらに平成17年度からの3歳児クラス以上の完全給食実施へ向けて、順次、調理室の改修整備等を進めてまいります。

 なお、皆様からご要望いただいております
乳幼児医療費の通院にかかる支給対象年齢の拡大については、これまでの前向きな検討結果を早急にまとめ、方針を明らかにするとともに、一部負担金の窓口払いの廃止については、引き続き検討してまいります。

 
高齢者福祉については、高齢者が地域で安心して活き活きとした生活を送れるよう、介護予防活動を積極的に展開するとともに、高齢者の雇用の場や交流の場として、社団法人戸田市シルバー人材センターの拠点整備や事業活動の充実を図ってまいります。

 加えて、地域安心ネットを構築するため、在宅介護支援センターや民生委員・児童委員などの地域の社会資源を有機的に再編成し、
「(仮称)戸田市福祉の駅整備構想」の実現に向け、調査・研究も行ってまいります。

 
障害者福祉については、住み慣れた地域での自立と社会参加を促進し、その活動へ積極的な支援を行ってまいります。社会参加等就労支援として、「障害者就労支援」組織の確立に向け積極的に取り組んでまいります。また、障害のある児童等の健やかな育成を図るため、障害児放課後児童保育への支援を図ってまいります。

 さらに、聴覚障害者のコミュニケーション支援として、
手話通訳派遣事業を開始いたします。

 
医療保健センターの診療事業については、診療体制の充実を図るとともに、窓口業務等の民間委託など、経営改善に努めてまいります。

 
保健事業については、各種保健事業を充実するとともに、未受診児家庭訪問を実施し、受診の奨励や虐待の予防に努めてまいります。さらに、妊婦のサポートを充実するため、マタニティーバッジをお配りするなどにより、市民サービスの向上を図ってまいります。

 なお、
医療保健センターの分離・建て替えについては、できるだけ早期に実現するよう引き続き調査・研究を進めてまいります。

 
介護老人保健施設については、通所リハビリテーションの定員枠を拡大するとともに、西老人介護支援センターと訪問看護ステーションの機能を統合し、運営の効率化を図り、居宅介護支援を充実してまいります。

 
国民健康保険事業については、高齢化や医療の高度化などにより医療費は増加する一方、収納率は低下しており、厳しい財政状況にあります。こうした状況を踏まえ、収納率の向上対策については、コンビニエンス・ストアでの納税を可能にして利便性の向上を図るとともに、納税相談や休日窓口を積極的に実施するなど、徴収体制の強化を図ってまいります。

 また平成15年度において、
地域福祉計画策定に120人の市民により活発な討議と様々な提案がなされました。このことを通じて、市民相互の連携と活動の継続といった成果を生み、まさに、地域福祉への参加気運の高まりに強い手応えを感じているところであり、引き続きその活動を支援してまいります。


(学校教育・生涯学習と文化)

 次に、学校教育・生涯学習と文化について申し上げます。

 私は常々、地域づくりは人づくりにあると考えております。そのためにも、家庭・学校・地域の連携を密接にした教育の推進に力を注いでまいります。

 学校教育においては、“確かな学力の育成”と“心の教育の充実”を大きな2つの柱として心身ともに健全な子どもの育成に努めます。そのため、
「戸田市教育振興計画」を策定し、信頼される学校づくり、特色ある学校づくり、開かれた学校づくり、さらには、“安全で安心できる学校づくり”を推進してまいります。

 “確かな学力の育成”では、全小学校に配置している
「わくわくティーチャー」を増員するとともに、中学校には、新規に「いきいきティーチャー」を配置することで、基礎・基本の定着を図ってまいります。

 さらに、
構造改革特区の認定を受けました小学校の英語活動については、ALTの増員や、よりよい指導法の研究などにより充実を図り、国際社会で活躍できる戸田っ子の育成を進めてまいります。

 
“心の教育の充実”では、道徳教育や生徒指導の充実をはじめ、福祉・ボランティア体験や総合的な不登校対策アクションプログラムを推進するなどして、今後とも総合的に取り組んでまいります。

 
“安全な学習環境づくり”では、学校の安全神話が崩れ去る中、他市に先がけて6月8日を「子どもの安全を守る日」と定めるなど家庭・学校・地域が連携して子どもの安全確保に努めてきたところであります。引き続き、すこやかサポーターの派遣、警備員の配置など安全確保に努めてまいります。

 また、平成16年度からの2学期制の試行や平成17年度からの中学校選択制導入などの制度改革に取り組んできたところですが、今後とも改革すべきは大胆に改革し、生徒指導をはじめとする基本的な活動についても、さらなる充実を図り
“教育のまち 戸田”の実現に向け取り組んでまいります。

 続いて
教育環境の整備については、快適な学習環境を提供するため、普通教室にエアコンを順次設置していきます。また、引き続き校舎等の耐震診断・耐震補強工事やトイレ改修等教育環境の施設整備を計画的に進めてまいります。

 
生涯学習施設等との複合施設であります芦原小学校については、平成17年4月の開校に向けた諸準備を進めるとともに、地域連携施設としての運営につきましても準備を進めてまいります。

 
留守家庭児童保育指導室については、指導員体制の充実を図るとともに、今後の学童保育事業のあり方について検討を進めてまいります。また、夏休みなど学校の長期休業中に、地域で運営する児童クラブ等に対して支援を行うなど、子どもの居場所づくりにも取り組んでまいります。

 
青少年健全育成については、地域総ぐるみで青少年活動の推進並びに健全育成や非行防止の啓発事業を進めてまいります。

 
生涯学習の振興については、「マナビィ講座」等の各講座を充実するとともに、様々な生涯学習施設を活用して、市民により多くの生涯学習の機会と情報を提供してまいります。

 
スポーツ振興については、戸田市スポーツ振興審議会を設置し、スポーツ振興計画の策定及び総合型地域スポーツクラブのあり方について研究を進めてまいります。

 また、彩の国まごころ国体ボート競技が9月11日から14日まで開催されます。日本一簡素で心のこもった国体を理念に、彩り豊かな国体となりますよう、多くの市民の皆様のご協力をいただき、ボート競技を成功させ、
「ボートのまち戸田」を全国にアピールしてまいります。

 
学校給食については、小学校の単独校調理場方式の導入に向け、まず戸田第二小学校と芦原小学校の2校において調理場の整備工事を実施するとともに、調理業務の委託化等の準備も進めてまいります。

 
図書館については、市民の多様な要望を配慮した蔵書の整備を図るとともに、小さな時から本に親しめるよう、子どもを対象にしたおはなし会や小さなお子さんに、本に親しんでいただくため、初めて手にする絵本をプレゼントするブックスタート事業を引き続き実施してまいります。

 
郷土博物館及び彩湖自然学習センターについては、学校との連携を強め、子どもの体験学習活動の場として、一層の充実を図ってまいります。


(環境と市民生活)

 次に、環境と市民生活について申し上げます。

 
環境問題については、単に一自治体のみで解決できるものではありませんが、人間の生命・安全に関わることであり持続可能な社会を目指すために、優先されるべき課題であると考えております。本市においては、ごみの堆肥化・飼料化や河川浄化などをテーマとする市民活動も活発で、NPO(民間非営利団体)やボランティア団体にご活躍いただいております。市といたしましても、環境基本計画に基づく各種事業について、市民・事業者との協働により、積極的に展開してまいります。

 
環境マネジメントシステム(ISO14001)は目標である「温室効果ガス総排出量5%削減」の最終年度にあたり、さらなる省エネルギーを推進してまいります。

 また、
工業地域での住工混在問題への対応については、引き続き問題解決のための検討を続けていきます。

 ごみの分別を改定後、市民の皆様のご協力のおかげで、もやすごみは約3割減少いたしましたが、まだまだごみの減量化は必要であります。そのために、新たにNPOのご協力のもと、
家庭系生ごみリサイクル試行業務を行います。

 また、
不法投棄防止対策として導入いたしました監視カメラは、その効果が絶大でありますので、さらに2基増設し、不法投棄防止の強化を図ってまいります。

 
防災対策については、「災害に強いまちづくり」を進めるため、市民が自らの身を守り、まちを守るという観点から、自主防災組織の充実、防災活動に関する指導者の養成、知識習得や情報の提供を支援してまいります。

 
消防については、住宅の密集化・高層化が急速に進行する中、市民の生命及び財産を守るため、消防力を一層強化するとともに、救急救命士の養成・研修を行ってまいります。

 
交通安全対策については、依然として交通事故発生率は高い水準にあり、今後も市民、警察等との連携を深め、交通安全意識の高揚をはじめ、違法駐車の排除、交通安全施設の整備など積極的に進めてまいります。

 
犯罪の発生防止については、緊急の課題として、市民、事業者等との一層の連携のもとに、安心して生活のできるまちづくりに取り組み、防犯意識の高揚や地域防犯活動への支援を行うため、「防犯対策室」の設置や防犯パトロールの増強により防犯体制を強化するなど、防犯諸施策を積極的に進めてまいります。

 
市民相談については、雇用不安や消費生活の多様化などにより、様々な事例が発生しておりますので、安心して生活していただくために相談体制の充実を図ってまいります。

 
市内3駅周辺の放置自転車対策については、生活環境や災害時の緊急対応に配慮し、さらに強化してまいります。


(産業・労働)

 次に、産業と労働について申し上げます。

 我が国の景気については、基調判断として設備投資と輸出に支えられ着実に回復しているとされていますが、持続的な景気回復につながるかどうかは、未だ不透明な面があります。

 そのため、地方からの経済再生に向けて、市内業者を支援すべく、
融資制度事業の啓発に努めるとともに、商店会等が積極的に取り組む事業へのコンサルタント派遣を含む支援を行い、商業の活性化を図ります。また、製造業を中心とした新製品・新技術開発支援ISO認証取得のための支援事業を引き続き実施してまいります。

 さらに、新たに開設した
起業支援センターを活用し、SOHO事業者等の育成を図るとともに、産・学・公の連携の充実を図り、地域産業振興に取り組んでまいります。

 
雇用対策については、引き続き緊急地域雇用創出基金の活用や、より効果的な求職活動のための情報提供に努め、求人開拓促進事業や、研修等の職業能力開発支援を行ってまいります。

 
中小企業従業員退職金等福祉共済事業については、経済及び国の制度の動向を考慮しつつ、制度運営について、引き続き検討を行ってまいります。


(都市基盤と生活基盤)

 次に、都市基盤と生活基盤について申し上げます。

 
新曽第一土地区画整理事業については、6年目をむかえ、事業も本格化してきました。引き続き家屋の移転の促進、道路・水路築造工事等事業の推進に努めてまいります。

 
新曽第二土地区画整理事業については、昨年12月に事業計画決定の告示をし、事業を開始いたしました。当面の目標である仮換地指定を平成17年度末に行えるよう進めてまいります。

 
新曽中央地区のまちづくりについては、まちづくり協議会を設立し地域の皆さんと市との協働による、住み良いまちづくりの実現に向けた具体的な検討を進めてまいります。

 
開発指導事業については、中高層建築物や大規模建築物等の建築をめぐっての紛争が増えてきていることから、この調整のための必要な基準を定めるよう取り組んでまいります。

 
環境空間の整備については、戸田公園駅南地区の整備が順調に進んでおります。また、東日本旅客鉄道株式会社より提供を受けた環境空間の一部を、市民に親しんでいただける花と緑で彩られた緑地・緑道として順次整備することで、「戸田華かいどう21」の実現に向けて引き続き取り組んでまいります。

 
菖蒲川・笹目川をはじめとする河川浄化については、「清流ルネッサンスII水環境改善緊急行動計画」に基づき、引き続き各施策を実施し、河川環境の改善を目指し努力してまいります。

 
上戸田川改修事業については、地元懇談会を重ねて策定した「上戸田川整備計画」に基づき、新年度より、二枚橋から新田橋間の護岸工事に着手してまいります。また、上戸田川流域の浸水対策の一環として、健康福祉の杜駐車場内に調整池を設置してまいります。

 
荒川左岸排水路については、治水対策として引き続き護岸整備を実施してまいります。また、遊歩道や浄化対策、河川の愛称名等につきまして、地元懇談会を開催しながら、市民と協働で整備してまいります。

 
都市マスタープランの推進については、関連事業の進行管理を図りながら、引き続き「都市マスタープラン推進のための市民会議」でご意見・ご提案をいただき、目標達成に向けて取り組んでまいります。

 
景観行政の推進については、引き続き大規模建築物等の景観誘導や三軒協定の認定、また景観づくり推進地区選定の基本方針の策定などにより、優れた都市景観の創出に取り組んでまいります。

 
駅の交通バリアフリー化については、北戸田駅、戸田駅に引き続き、戸田公園駅構内にエレベーターおよび下りエスカレーターが設置されるよう、東日本旅客鉄道株式会社に対し、支援してまいります。

 
道路の維持・管理については、情報化による一層の効率化を図り、生活道路の交通安全対策や景観に配慮した歩行空間の確保などを含めて、道路環境の整備に努めてまいります。

 市民の憩いと安らぎの場所であります公園については、
バリアフリー化や老朽設備の改修も含めた安全で安心な公園づくりを推進してまいります。また、彩湖・道満グリーンパークは、週末や休日には市外の方々のご利用も多く、公園内駐車場の混雑が問題となっております。そこで、公園内駐車場の混雑緩和などを目的として駐車場の有料化を行います。

 
緑化推進については、各種緑化補助金制度をご利用いただけるよう、制度の普及に努め、緑化に対する啓発を行います。さらに、草花くさばな・花木かぼくの無料配布や緑のボランティア活動への支援をとおして、緑化推進に努めます。

 
下水道事業については、安全で快適な市民生活を確保するため、新曽第一土地区画整理事業地内の汚水排水整備事業を推進するとともに、笹目川以西及び下戸田地域等における雨水排水整備事業を推進してまいります。

 
水道事業については、長引く水需要の低迷により、収益の増加が見込めない中で、これまで以上に経営の効率性・合理性を追求し、コストの縮減に努めてまいります。また、限られた財源の中においても、基本計画に沿って、老朽管の更新など施設の整備を推進し、市民のニーズに対応したサービスの向上に努めてまいります。


(参加と交流)

 次に、参加と交流について申し上げます。

 
地域コミュニティづくりについては、上戸田コミュニティワークショップ『上戸田「ふれあい」10テン』の展開・拡充に努め、上戸田地区を含め、地域のコミュニティ意識の醸成に努めてまいります。

 
市民活動推進事業については、市民との協働のまちづくりを目指し、市民の自主的・主体的な活動の活発化を図るため、その環境整備として「市民活動支援サイト」の開発や地域通貨の二次運用に向けた支援等を行ってまいります。

 
男女共同参画事業については、勤労女性センターを男女共同参画センターに衣替えし、男女共同参画推進の拠点としての機能を充実させ、ここを中核とした積極的な事業展開により、男女共同参画社会の形成推進に努めてまいります。

 
交流事業については、中国・開封市と友好都市を締結して20周年を迎えることから、本市は友好代表団と市民訪問団の2団を派遣し、開封市からは友好代表団と対外友好協会や企業等の市民団の来日が予定され、さらに、オーストラリア・リバプール市の代表団の来日も予定されております。そこで引き続き、友好・姉妹都市及び国内姉妹都市との市民交流の活発化に向けた支援をしてまいります。

 
広報・広聴については、市民の市政への参加を推進するため、市政情報を積極的に提供するなど、市民の立場に立った広報紙づくりをより一層進めるとともに、「市民の声」の充実のために電子モニター制度を導入してまいります。市民と情報を共有する施策といたしまして、「市民パブリック・コメント制度」、「情報公開制度」等がありますが、より一層ご活用いただくために、さらなる啓発を行い、市民との協働に努めてまいります。また、「個人情報保護制度」により、最大限市民のプライバシーを保護することで、市民との信頼関係をより充実してまいります。


(市政運営)

 最後に、市政運営について申し上げます。

 行政を経営的な視点から、より戦略的で効率的に運営していくため、事業の業績測定とその活用を目的とした行政評価システムを導入してまいります。新年度は、15年度に試行を行った事務事業評価の改善と充実を行うとともに、これに施策評価、政策評価を加えた行政評価システム全体の検討と構築を図ってまいります。関連いたしまして、平成18年度からの指針となる、
第3次総合振興計画後期基本計画の策定に、市民の皆様のご参加をいただきながら取り組んでまいります。

 また行政改革については、平成13年度からスタートした5カ年の改革の基本方針である「新行政改革大綱」も残すところ2年となりました。

 そこで、新年度は後期の事業について見直しました「行政改革推進計画」を中心に市民本位の改革を実践することによって、市民の皆様から「本物の改革」と言っていただけるよう、確かな成果を生みだしてまいりますとともに、次の改革ステップへの移行をスムーズに行うための準備を進めるなど、弛まぬ努力を続けてまいります。

 
電子市役所の実現に向けた取り組みについては、市民の皆様にインターネットを利用した、ノンストップ、ワンストップサービスの提供ができるよう進めていきます。その中で特に、インターネットを利用した電子申請、電子届出については、平成17年度の運用に向けて、県内59市町村の共同により開発、構築に取り組んでまいります。

 
電子入札システムについては、近く「埼玉県電子入札共同システム」が完成する予定ですので、このシステムの試行を行い、本格運用への準備をすすめてまいります。

 
コンビニエンス・ストアでの納税については、本市が「構造改革特区」として提案したことにより、全国での導入が可能となりましたので、納税者の利便性の向上を図るため、本市では全国でもいち早く実施いたします。これによりまして収納率の向上を期待しておりますが、今後なお一層税収の確保に努めてまいります。

 本格的な地方分権時代を迎える中で、市民とのパートナーシップによるまちづくりを推進するためには、人材の育成も求められます。

 そのためには、職員自身が時代の変化に即応した問題意識と、高いコスト意識に裏付けられた地域経営の感覚を持って、意欲的に仕事に取り組んでいかなければなりません。

 そこで、主体的な職場研修などを通じて、職員の問題意識の醸成を図るとともに、職員の専門分野や市民ニーズを考慮した研修を実施するなど、
職員の能力が最大限に発揮される「人づくり」の環境整備に取り組んでまいります。

むすび

 私は、まちづくりの原点は、地域に暮らす人々が力を合わせ、理想とする地域社会を築き上げていこうとする「想い」であると信じています。市民一人ひとりの地域への「想い」が、大きなエネルギーとなって戸田市は変わっていくことができます。

 そして、そうした変化の中にあっても私たちは、決して「戸田市らしさ」を失うことなく、人の温もりが感じられるまちづくりを進めていかなければなりません。そのためには、まず市民一人ひとりが自分らしさを大事にし、地域との強い「絆」を結んでいくことが大切であります。

 昨年来、人気グループSMAPが歌う「世界に一つだけの花」が大ヒットしております。あの曲は、私たちの誰もが代わりのいない特別な存在であり、自分らしく一生懸命生きることが大切であるというメッセージを伝えています。まちづくりも同様であると思います。私はこれからも、戸田市が世界に一つだけのオンリーワンであり続けるために、市民の皆様とのパートナーシップを基本に、魅力ある、愛される「戸田づくり」に全力を挙げて取り組んでまいります。

 最後に、市民の皆様並びに議員各位に対しまして、市政への変わらぬご支援・ご協力をお願いいたしまして、平成16年度の市政運営に対する所信といたします。



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